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禁煙すれば、動脈硬化性疾患はもとより、肺がんなどの喫煙関連がん、慢性閉塞性肺疾患、消化性潰瘍などの喫煙関連疾患のリスクが確実に低下することが数多くの観察的疫学研究で報告され、十分な科学的証拠があります。これらの研究成果を一言でまとめると、「禁煙は健康の大前提」といえます。
禁煙の効果に関する最近の情報としては、世界の研究をレビューして2007年に国際がん研究機関(IARC)が発表した“Reversal of Risk After Quitting Smoking” 1)という報告書があります。図5に虚血性心疾患における禁煙の効果の要約を示しましたが、禁煙により確実にリスクが低下することが明らかになっています。また、禁煙の脳血管疾患への効果についても、虚血性心疾患とほぼ同様に効果があることが報告されています。
肺がんについては、循環器疾患に比べて禁煙によるリスクの改善は遅れるものの、禁煙5~9年以内にリスクの低下が明らかとなり、その後、禁煙年数とともにリスクが低下することが明らかになっています。
図5 Reversal of Risk After Quitting Smoking - IARC HANDBOOKS OF CANCER PREVENTION Tobacco Control Vol.11 -( 2007)
禁煙の効果をランダム化比較対照試験の形で明らかにした有名な介入研究としては、Lung Health Study(LHS)があります2)。この研究では軽度の肺の閉塞性障害を有する35~60歳の喫煙者約5,800人を研究対象とし、禁煙に積極的に介入する群(特別介入群)と通常ケア群の2つの群を設定して、その後11年間追跡調査を実施しました。特別介入群には、禁煙プログラムとして、10週間に計12回のグループ学習とニコチンガムの無料提供、さらに禁煙者に対して再発予防の禁煙維持プログラム(禁煙後の体重増加やストレス対処など)を提供しました。その結果、5年後の時点で4年以上禁煙を継続した者の割合は特別介入群21.7%、通常ケア群5.4%と、両群間で差がみられ、さらに15年後の特別介入群の全死因死亡率が、通常ケア群と比べて15%有意に低くなりました。肺がんを除く呼吸器疾患の死亡率は、特別介入群では通常ケア群の約1/2まで有意に低下しました(図6)。また、虚血性心疾患や肺がんの死亡率は、サンプル数が少ないため有意ではなかったものの、その低下傾向が観察されました。
図6 死因別にみた禁煙の効果-Lung Health Study(15年間の追跡結果)
喫煙はさまざまな疾患の原因となることから、喫煙者は非喫煙者よりも医療費が多くかかることが報告されています。また、特定保健指導では喫煙率が低いほど、積極的支援の対象者は少なくなり、特定保健指導にかかる費用が軽減されます。禁煙支援により喫煙者を減らすことは、健康面だけでなく、医療経済面にも好影響を与えます。
特定保健指導による禁煙の経済効果について、大阪府立健康科学センターの健診対象集団を用いて試算した結果を図7に示します3)。禁煙治療開始から最初の数年間は、禁煙治療費が医療費削減額や特定保健指導費削減額を上回りますが、累積6年で黒字に転じ、15年目には696万円の黒字になることが推定されました。つまり、禁煙支援をメタボリックシンドローム対策と並行して行うことにより、将来的に医療費を低減できるばかりでなく、当面の特定保健指導の費用も抑制できると考えられます。
図7 特定保健指導における禁煙の経済効果(累積)
【文献】
1) International Agency for Research on Cancer World Health Organization: IARC Handbooks of Cancer Prevention, Volume11: Reversal of Risk After Quitting Smoking. IARC, Lyon, 2007, pp269-293.
2) Anthonisen NR, et al: The effects of a smoking cessation intervention on 14.5-year mortality. Ann Intern Med. 2005;142:233-239.
3) 効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究(主任研究者 中村正和). 平成19年度厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業研究報告書. 2008.
本冊子では「メタバコ」という言葉を使っています。これは、メタボリックシンドローム(メタボ)とタバコを組み合わせた造語です。「メタバコ」に込めた意味は3つあります。
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