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喫煙は動脈硬化を促進する独立した原因
喫煙は、肺がんなどの多くのがん、虚血性心疾患や脳梗塞、くも膜下出血などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患、消化性潰瘍など、さまざまな疾患の発症の原因です。最近では喫煙がメタボリックシンドロームや糖尿病の発症リスクを上昇させることが明らかとなっています。また、喫煙とこれらの病態が重なると動脈硬化性疾患をはじめとした重大な合併症のリスクがさらに高くなることから、メタボリックシンドロームや糖尿病対策として、禁煙は必要不可欠です。
喫煙は、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常と並んで、動脈硬化を促進する独立した原因です。したがって、喫煙すると動脈硬化性疾患のリスクが上昇します。
日本人95,000人を対象として10年間の追跡調査を行ったJACC Studyによると、喫煙者は非喫煙者に比べて循環器疾患全体の死亡リスクが1.6~2.0倍有意に上昇することが明らかにされています(表1)1)。疾患別では、虚血性心疾患では男女とも約3倍、脳卒中では1.4~2.0倍、喫煙者で死亡リスクが高くなります。また、脳血管疾患の中で脳梗塞と喫煙の関係は知られていますが、意外と知られていないのがくも膜下出血です。くも膜下出血は、喫煙により男女とも約3倍リスクが上昇します。くも膜下出血の原因として、高血圧や先天的な血管の脆弱性が知られていますが、喫煙も原因の約3割を占める主要な原因です。
表1 循環器疾患死亡における現在喫煙者の相対危険度
喫煙による動脈硬化のメカニズムとしては、血管への直接傷害作用のほか、糖代謝障害、脂質代謝障害、凝固・線溶能の亢進といった、複合したメカニズムで動脈硬化を進行させることがわかっています(図1)2)。これら4つの作用について以下に解説をします。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素が血管拡張物質の産生を低下させ、血管内皮を傷害します。さらに喫煙すると酸化ストレスにより、LDLコレステロールなどの血清脂質の変性が起こり、それを貪食した泡沫細胞が血管内へ浸潤して動脈硬化が進むと考えられています。
喫煙はアドレナリンなどのストレスホルモンの分泌を高め、血糖値の上昇を引き起こします。また、喫煙は脂肪組織から分泌される善玉のサイトカインであるアディポネクチンの減少や悪玉のサイトカインであるTNFαを上昇させ、インスリン抵抗性を高めます。そのほか、タバコの有害成分が膵臓のβ細胞を傷害してインスリンの分泌能を低下させることも指摘されています。
喫煙は中性脂肪やLDLコレステロールを増加させるほか、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを減少させます。このメカニズムとして、喫煙による脂肪組織のリポプロテインリパーゼの活性の低下が関係しています。
喫煙はニコチンによる血小板凝集の促進、凝固系因子であるフィブリノーゲンの増加などを通して血栓の形成を促進します。凝固系の亢進には、喫煙によりPAI-1という悪玉のサイトカイン(血栓を溶かすプラスミノーゲンを阻害する作用のある物質)が上昇することも関係しています。
図1 喫煙による動脈硬化のメカニズム
【文献】
1) Iso H, et al: Smoking cessation and mortality from cardiovascular disease among Japanese men and women: the JACC Study. Am J Epidemiol. 2005; 161: 170-179.
2) Haustein K-O: TOBACCO or Health? Physiological and social damages caused by tobacco smoking. Springer. 2003, pp118-147.
本冊子では「メタバコ」という言葉を使っています。これは、メタボリックシンドローム(メタボ)とタバコを組み合わせた造語です。「メタバコ」に込めた意味は3つあります。
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